岡山地方裁判所 平成元年(ワ)820号 判決 1992年2月17日
原告(反訴被告)
クボタ管機材工業株式会社
ほか一名
被告(反訴原告)
西岡真由美
主文
一 原告(反訴被告)クボタ管機工業株式会社及び原告加藤高一の被告(反訴原告)に対する別紙表示の交通事故による損害賠償債務は存在しないことを確認する。
二 被告(反訴原告)の反訴請求を棄却する。
三 訴訟費用は、本訴、反訴を通じ被告(反訴原告)の負担とする。
事実
第一当事者の求めた裁判
(本訴について)
一 請求の趣旨
1 原告(反訴被告)クボタ管機工業株式会社(以下「原告会社」という)及び原告加藤高一(以下「原告加藤」という。)の被告(反訴原告、以下「被告」という)に対する別紙表示の交通事故に基づく損害賠償債務は存在しないことを確認する。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
二 請求の趣旨に対する答弁
1 原告らの請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告らの負担とする。
(反訴について)
一 請求の趣旨
1 原告会社は被告に対し、金二三四万九二七五円及びこれに対する平成元年九月二九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は原告会社の負担とする。
3 仮執行宣言
二 請求の趣旨に対する答弁
1 被告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
第二当事者の主張
(本訴について)
一 請求原因
1 原告加藤と被告との間に別紙表示の交通事故(以下「本件事故」という)が発生した。
2 本件事故は原告加藤の過失により生じたから、原告加藤は民法七〇九条により、原告会社は右車両の保有者であるので、自賠法三条により、連帯して損害賠償責任を負う。
3 本件事故により、被告の車両に損害が生じたが、原告らは被告に対し一一七万四二〇〇円を支払つたので、被告の損害は既に填補されている。
4 しかるに被告はこれを争うので、原告らは被告に対し、請求の趣旨記載の判決を求める。
二 請求の原因に対する答弁
1 請求原因1、2の事実は認める。
2 同3の事実は争う。
(反訴について)
一 請求原因
1 原告加藤と被告との間に本件事故が発生した。
2 本件事故は信号機のある三叉路交差点を青信号で右折していた被告運転の車両(以下「事故車」という)に、原告加藤運転の車両が赤信号を無視し、かつ前方不注視の過失により衝突したものであり、原告加藤は原告会社の従業員で、本件事故は同原告の業務中に発生したから、原告会社は民法七一五条により、被告の損害を賠償する責任がある。
3 被告の損害
(一) 事故車修理代 六八万九〇七〇円
(二) 代車使用料 四六万三五〇〇円
原告会社加入の保険会社の者と被告の話し合いの結果、事故車に代わる新車または事故車と同型車が被告の手元に入るまで、原告会社または保険会社で代車使用料を支払うとの約束があつたため、右期間中代車した使用料金。
(三) 評価損 一一九万六七〇五円
事故車の新車価格は三三二万三〇〇〇円で、登録したのは平成元年三月三〇日であるから、本件事故当時における事故車の時価は定額法によると三〇七万三七七五円となる。
3,323,000-(3,323,000×0.9/72×6)=8,073,775
事故車の修理前の価格は一一八万八〇〇〇円となるから、本件事故当時の事故車の時価から修理前の価格及び修理費用を控除した価格が評価損となる。
(四) 弁護士費用 二〇万円
4 よつて被告は原告に対し、請求の趣旨記載の判決を求める。
二 請求原因に対する答弁
1 請求原因1、2の事実は認める。
2 同3の事実のうち、修理費用が被告主張のとおりであることは認めるが、その余は否認する。
三 原告会社の損益相殺の抗弁
原告会社は被告に対し、修理費六八万九〇七〇円及び代車使用料の名目で四八万五一三〇円を支払つたから、被告の損害額から控除されるべきである。
四 原告会社の抗弁に対する答弁
抗弁事実は争う。
第三証拠
証拠目録記載のとおりであるのでこれを引用する。
理由
第一反訴について
一 請求原因1、2の事実は当事者間に争いがないから、原告会社は被告に対し、民法七一五条、七〇九条に基づき被告の損害を賠償する責任がある。
二 そこで損害につき判断する。
1 修理費 六八万九〇七〇円
当事者間に争いがない。
2 代車使用料 四万六一三〇円
証拠(甲一、二、乙三、証人荒木、同堀部、被告)によれば、本件事故の一週間後に原告会社加入の保険会社の荒木らが損害賠償の話のため原告を訪れ、事故車が修理可能である旨の説明をしたが、原告は事故車が購入後六か月しか経過していないこと及び免許をとつて間がないことを理由として新車に替えるよう要求し、子供の送迎に必要であると事故車と同程度の代車を要求したので、荒木らは代車は修理期間のみに認められる旨説明したこと、その後も被告は新車を固辞して譲らず、本件事故の翌日の平成元年九月三〇日から三日間代金二万一六三〇円で、更に同年一〇月三日から平成二年二月一四日まで代金四六万三五〇〇円でレンタカー会社から車を借りたこと、事故車の修理には約一か月かかつたが、事故車の損傷は主として前部であり、修理期間は一週間から一〇日程度であることが認められる。
尤も被告は、事故車に代わる新車または事故車と同程度の車が被告の手元に入るまで代車料を支払うとの合意が前記保険会社との間で成立していたと主張するが、これに副う証人堀部の供述は被告からのまた聞きであつて信用しない。
右認定の事実によれば、被告が事故車の修理に応じないため、長期間代車をすることになつたのであり、事故車の修理は遅くとも一〇日もあれば十分完了すると認められるから、同年一〇月九日までの代車使用料については、原告会社において負担すべき義務がある。
しかして前記認定の事実によれば、最初の三日間の代車使用料は二万一六三〇円、その後は一日当たり約三五〇〇円であると認められるから、代車使用料は四万六一三〇円となる。
21,680+8500×7=46,130
3 評価損 三〇万円
ところで事故により破損した車両を修理しても、修理後の価格が事故前の車両価格を下回ることが少なくないところから、右価格の差額を評価損として損害賠償請求をすることができるが、右評価損は、<1>修理することができなかつた機能・美観の障害、<2>使用期間の短縮、<3>事故車であることのみで下落する交換価値の低下等が考えられるところ、事故車が修理後も機能あるいは美観に障害を生じていることを認めるに足りる証拠はなく、証拠(甲五、乙二、四、証人荒木、原告)によれば、被告は事故車を修理し現在も乗車していること、事故車については財団法人日本自動車査定協会により評価損は二六万五〇〇〇円と査定されていること、事故車はホンダレジエンドであり、本件事故当時登録後六か月しか経過していなかつたこと、通常評価損は修理費の一割ないし三割とされていることが認められ、右事実に修理費等諸般の事実を併せ考えると、評価損は三〇万円と認めるのが相当である。
三 損益相殺
証拠(甲三、証人荒木)によれば、原告らは、修理費として六八万九〇七〇円、代車料として四八万五一三〇円の合計一一七万四二〇〇円を支払つたことが認められるので、これを前記認定の被告の損害額(合計一〇三万五二〇〇円)から控除すると、被告の損害は総て填補されたことになる。してみると、被告の反訴請求は失当である。
第二本訴について
請求原因1、2の事実は当事者間に争いがないが、前記認定のとおり、本件事故に基づく被告の損害は総て填補されているので、右債務の不存在を求める原告の本訴請求は正当である。
第三結論
よつて、原告らの本訴請求を認容し、被告の反訴請求を棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 將積良子)
〔交通事故の表示〕
日時 平成元年九月二九日
場所 岡山市神下一三六―一 国道二号線三叉路交差点
加害車両 原告加藤運転普通貨物自動車(岡一一に八九二六)
被害車両 被告運転普通乗用自動車(岡三三ね三八六八)
態様 国道二号線を東進中の加害車両と市道から同国道へ右折進入しようとした被告車両とが接触した。